実施許諾(ライセンス)契約の概要
所有する知的財産権(出願中のものも含む)、ノウハウを、権利者のもとに留保したまま、第三者に実施(使用・利用)を許諾(ライセンス)する場合に、その内容や条件を取り決める契約です。
一般的には、ライセンス契約として理解されています。
なお、当事者の双方が有する知的財産権について、それぞれがライセンスする場合、クロスライセンスと呼ばれます。
ライセンス契約として結ばれる契約
知的財産権をライセンスする場合、知的財産権の目的物によって、規制する法令に使われる用語に基づいて、3つの契約類型に分かれます。
3つの類型に当てはまらないものは、契約内容に合わせた呼び方をします。
実施許諾(ライセンス)契約の目的
許諾者(ライセンサー)側
- 対価(ロイヤリティー)収入の獲得
- 研究開発費用の回収
- 自社技術のスタンダード化
- 紛争の予防または解決
- クロスライセンスによる相手方技術の利用
- ライセンシーの製造する契約製品に使用される原材料、部品等の供給
- ライセンシーが成功した改良技術の利用
実施権者(ライセンシー)側
- 新製品の製造・販売(市場への新規参入)
- 自ら保有しない新たな技術の利用
- 研究開発に要する費用・開発時間の節約、開発失敗のリスク回避
- 権利侵害の回避(紛争の予防・早期解決)
- ライセンサーの顧客からの要望
- 既存製品の品質・性能等の改善
- 既存製品の製造費用の削減
- ライセンサーが成功したその後の改良技術の利用
実施許諾(ライセンス)契約における契約書作成のポイント
1. 権利の確認(契約前の事前調査)
- 対価を支払うに値する特許権なのか・・・
- 契約相手が「特許権者」なのか・・・
2. 実施権の選択
通常実施権か、専用実施権か・・・
通常実施権:同一の特許権に ついてのライセンスを複数の人に与えることができる
専用実施権:契約で定めた範囲(内容、期間、地域等)においてライセンスを独占的に与えるもの(特許権者自身も実施することができなくなる)
3. 実施範囲の明確化
- 発明の実施用途
- 製造品の数
- 地域
- 期間
- その他
4. 実施権の登録
専用実施権を設定する場合、特許庁への「登録」により効力が生じます。 特許庁の「登録」に関する規定が必須となります。
通常実施権では登録は必須ではありません。第三者に対して実施権者として対応するためには、「登録」が必要です。
ビジネスを守るためには、「登録」をお勧めします。
5. 対価
特許の評価(価値)、実施権の種類(専用実施権か通常実施権か)、市場の動向、今後の事業展開などを考慮して、当事者間で対価を決定します。
- 一括払い(イニシャル・ペイメント)なのか、のほか、実施料(ランニング・ロイ ヤリティ)なのか
- 実施料(ランニング・ロイ ヤリティ):定率実施料なのか、定額実施料なのか
6. 実施報告
対価の支払いが実施料(ランニング・ロイ ヤリティ)の場合は、一定期間ごとの実施状況を相手に報告するための項目、書式などを取り決めておきましょう。
7. 帳簿の保管と閲覧
実施料の支払いが的確であることを確認し、 トラブルを予防するために、会計帳簿の保管、閲覧について規定しておきます。
8. 第三者の権利を侵害する場合の対応
特許権が第三者の特許を侵害する場合、又は第三者から特許侵害の警告を受けた場合の対応方法について具体的に取り決めておきます。
9.再実施許諾と下請許諾
- 実施権者がさらに第三者(再実施権者)に実施許諾ができる「再実施許諾」について、取り決めをしておく。
- 実施権者の実施の一部又は全部を第三者に下請(外注、製造委託)することに関する「下請実施」について、取り決めをしておく。
10. 不争義務
当事者間で、特許の有効性について争うことのないようにする規定をおいておきます。
1. 契約締結後は争わない
2. 争う場合は契約を解除する
3. 複数の特許を実施許諾している場合に争いになっている特許のみ契約から除外する
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